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KAGURAZAKA・想い

第5回 神楽坂店主リレー取材:神楽坂想い

三方良し。商売するうえで、大切にしていきたい想い。

神楽坂銘茶 株式会社楽山
二代目
齋藤 昭人さん

5回目となる今回、「老舗 助六」3代目店主、石井要吉さんよりバトンを引き継いでいただくのは、神楽坂銘茶「楽山」の2代目店主、齋藤昭人さんです。

地元の住民はもちろん、近隣のお店からも愛される「楽山」のお茶。「かぐら坂 志満金」でも出されているという、そのこだわりの味を伝えていくために大切にしていることなどを伺いました。

※この取材は、新型コロナウイルス感染症が拡大する前に行っています。現在の状況と異なる部分がございますので、予めご了承ください。

神楽坂のお茶屋さんと言えば「楽山」

篆刻作家の先生にお願いして作っていただいたロゴ。

─お世話になっています、東京平版です。今回はよろしくお願いいたします。

〈齋藤さん〉よろしくお願いいたします。

─楽山さんは老舗という印象がありますが、意外と今の社長さんが初代なんですね。

そうなんです。父親が社長でして、昭和34年の創業で今年で59年になります。今回の取材は若い者(笑)に任せるということで、私がお話しさせていただきます。

当店は創業当初は牛込北町に店を構えていたんですが、昭和43年に今の場所に移転してきまして、その後、2005年に建て替えをして現在の形になりました。店舗のデザインのベースは私が考えたんですが、あまり狙い過ぎないようにしつつシンプルさで主張するというところを大事にしました。

─やはり神楽坂の街並みに合うようにというところは考えたんでしょうか?

〈齋藤さん〉そうですね。建物の高さや店舗のデザイン、看板の色など、神楽坂としての「粋」を乱さないよう、街並み景観をつくる『まちづくり協定』がありますので、その点は大事ですね。全国チェーンのお店も神楽坂に出店する際には理解していただいて協力してくださっています。

─楽山さんの店名のロゴはとても特徴的ですよね。入り口でもひときわ目を引きます。

〈齋藤さん〉店名は、左右対称で覚えやすいものが良いということで、神楽坂の「楽」を入れて社長が考えたんですが、ロゴは著名な篆刻作家の河野斗南先生にお願いして書いていただいたものです。もう亡くなられてしまったんですが、早稲田の130年記念の作品も作られた方で、印刻「百寿図」を皇室に献上したこともあるそうです。あまりにこのロゴのインパクトが強いので、大きな声では言えないですが真似するお店もあるようですよ(笑)。

人それぞれのお茶の楽しみ方を支える

楽山さんの数多くの商品。

─楽山さんではどのようなお茶を取り扱っているのでしょうか?


〈齋藤さん〉実は父親が掛川(静岡県)の精揉機(せいじゅうき)屋の生まれなんです。今では父親の甥が引き継いで問屋をしているのですが、そこから直で9割以上を仕入れています。

昨今はお茶屋の数が少なくなっているため、通販も使って全国へ向けた広い商圏で商売をしていけたらと思っているところで、現在は年間7,000~8,000件くらいを通販で売り上げています。通販ではありますが、やはり実店舗があると安心してご購入いただけるようで、一度ご来店いただいた方が通販から注文していただけることもあります。

─店舗にはどのようなお客様がいらっしゃるのでしょうか?

〈斉藤さん〉近隣のお客様も多いですが、2割ほどは海外のお客様がいらっしゃいます。ヨーロッパの方で、特にフランスのお客様が多いですね。抹茶や玄米茶など、購入するものを決めて来店される方もいらっしゃいますが、ワインと同じように、舌でころがしてタンニンを楽しまれるようですね。しまりのないもの、甘いものはお好きではないようです。

─なるほど。深いですね!

〈齋藤さん〉甘くないお茶は、飲む方でしたら一日10杯20杯と飲めるんですよね。その点コーヒーも同じだと思いますが、風味が混ざり合った中に旨味を探す感じでしょうか…。逆に、日本人のご年配の方は、甘いお茶をお好きな方が多いように思います。当店は様々な風味のお茶を取り揃えていますので、お好みに応じてご用意させていただきます。

前を通ると良い香りがしますよね。その香りに釣られてしまいます。

〈齋藤さん〉焙煎している時の煙というか、香りは、動きがないお茶の唯一の躍動感だと思います。五感を刺激して、リラックスする香りですね。店頭でほうじ茶を煎ることもありますので、楽しんでいただけたらと思います。

町の変遷に対する思いと希望

昭和29年ごろの芸者さんの番付表。100人以上いた芸者さんも今では約1/3に...

最近の神楽坂はいかがですか?


〈齋藤さん〉社長が言っていたのですが「長い歴史の中では良い時もあるし逆もある、その繰り返しだ」と。神楽坂についても同じでしょうか。現在はテナント貸しのお店が多いですが、いいお店が増えて町としての魅力が増すと賃料が上がって、いいお店が出ていってしまうなんてこともあります。バランスを保ちながら町としての評判を上げていくのは、なかなか大変なことですね。

いろんなお店が入ってくると、街並みは変化しますか?


〈齋藤さん〉全国チェーンのお店でも街並みを考えてくれるところは多いので、外観として神楽坂らしさは守られているかなと思います。独立したてのやる気のある人がくると、やはり一生懸命やっている姿というのは伝染して町が元気になりますね。商店街の神楽坂通り商店会にも入っていただいて、お店の運営だけでも大変だと思うんですが色々と快く協力していただけて助かっています。そのお陰もあって、神楽坂まつりのほおずき市屋台などもだいぶ賑やかになってきましたし、長い神楽坂という町の歴史から見たら、今はいい時期のような気がします。こちらとしても、商店会に入ってよかったと思っていただける活動にしていかないと、と気が引き締まります。

神楽坂としては、昔と比べたら本当に変わりました。私が子どもの頃は日曜日はお店が休みでしたし、道でキャッチボールなんかしてましたね。そういえばこんなものがありますよ。昭和29年ごろの芸者さんの番付表。以前、芸者さんだった方が持ってきてくださったのですが、これを眺めてるだけでも楽しいんです。ざっと100人以上の方がいらしたんですね。現在ははっきりとはわかりませんがだいぶ減っているんだろうとは思います。

神楽坂のお店では、毎回なかなか見られないものが見られますね。勉強になります。これから増えてほしいお店などはありますか?

〈齋藤さん〉もっと物販店にも増えてほしいなと思います。飲食店の比率が高過ぎると、お客様は満腹になったらすぐ帰ってしまう。物販店がこの町に引き止めておければ、そのうちにまたお腹が空いてもう1軒…と、うまいこといくかどうかは分かりませんが(笑)、町としてのバランスが大切だと思うんです。ここはデパートの専門店同士のようなものなので、お互いの専門性を高めて町の魅力を感じてもらえるようになるといいですね。

「三方良し」という考え方

最後に、家訓や商売に対する心構えなどはありますか?


〈齋藤さん〉社長からはよく「三方良くないと続かない」と言われます。一番はお客様、次は仕入れ先や急須の会社様・作り手さんなどの協力会社、自分の会社が三番目。みんなが良くないと流れが良くないんです。自分のところだけ儲かろうと思ったところで、どこかが滞ってしまったら結局は自分のところに戻ってくるものなんです。若い頃は調子に乗ってしまったこともありましたが(笑)、今は親に言われたことを実感しながら商売しています。

お客様を思い、作り手を思い、町を想うー。
初代の志を引き継ぎつつ、時代を見据えて新たな展開を考える2代目店主。
店舗の移り変わりをプラスに変換し、より魅力ある神楽坂を創り出す策も見えているのかもしれません。

次回は「神楽坂 紀の善」さんへとバトンを繋ぎます。
どうぞお楽しみに。

神楽坂銘茶 株式会社楽山

〒162-0825 東京都新宿区神楽坂4-3
電話:03-3260-3401
FAX:0120-80-3402
URL:https://www.rakuzan.co.jp/

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