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第九回 マシュマロCOC
第9回は王子製紙の「マシュマロCOC」を選択しました。
この特徴的な「マシュマロ」という製品名は、なめらかなお菓子のマシュマロのイメージからネーミングされたそうです。1993年に高級印刷紙として販売され、高級感のある高平滑(一般的な上質紙と比較し、平滑度が約40%高い)が特徴的なケント紙です。
用 途
非塗工紙でありながら世界最高水準の平滑性を持っているので、名刺や各種カード等においてもワンランク上の高級感を出すことができます。
きめ細かな滑らかさとプレーンな白色であることに加え、くりかえし使ってもへたれることがない、打たれ強さを持っているので、一般的には「名刺」でよく使用されています。また各種カード、ポストカードや招待状や封筒などでも使用されることの多い紙です。
所 感
マシュマロという製品名の印象のとおり、指先へのやわらかな感触と明確な白色が印象的ですが、非塗工紙特有の色の沈みがあり、濃度感が失われてしまう印象を持ちました。実際に印刷して見ると全体的に沈んだイメージになってしまいます。したがって発色を求められる印刷物には適さない印象を持ちました。
用紙実験考察
マシュマロCOCは人物、室内、風景の写真3点共に発色性が悪いと感じました。
非塗工紙の為、インクが吸収されやすく60%付近からの濃度が上昇しません。トラッピング数値を測定すると(表記載)レッド系統は50.68% グリーン系統は83.35%ブルー系統は62.61%と計測されました。
ガモットマッピングからは全体の色域が60〜70%程度まで圧縮されていてJapan Color準拠のコート紙と比べ、色彩の表現領域は少ないですが、比較的色のバランスがとれていることが分かります。
修正方法
修正前の印象として中間の濃度が高く、コントラストが弱いことにより全体的に沈み濃い印象となっていました。
それらを踏まえトーンカーブを使用し中間を抑え、暗部の濃度アップをしました。
にごりに関してはシアン、マゼンタを下げて調整します。暗い印象の修正は彩度を上げることによって明るさを出しました。2次色・3次色の濁りの成分となる各々の色も抑えました。そのことにより、コントラストをつけ、発色よくすることが出来ました。
マシュマロCOC“調子修正後”色校正
まとめ
「所感」に明記したように今回選択した「マシュマロCOC」は、発色性という意味では、「オフセット4C印刷に推奨できない銘柄」と捉える見方もあると思いますし、通常のコート紙/マット紙と比較すると一般的なカラー商業印刷物としては需要の多い銘柄ではないと思います。
「東京平版のかみの実験室」も今回で9回目ということで、あえてニッチな銘柄を選択してみました。
個人的な見解ですが、いままでの経験でラグジュアリーアパレルブランドのクライアントからの要望で、マシュマロCOCで製品を製作したことがあります。
校正には大変苦労した覚えがありますが、製品の出来上がりは他の一般紙にはだせない深みのある高級な仕上りになると思います。
クライアントから「あえて沈み気味の色調で深みと味わいのある仕上りを〜」そんな要望があった場合には、「マシュマロCOC」をご提案してみるのはいかがでしょうか。