東京平版のかみの実験室

第一回 コート紙と上質紙

 塗工紙の代表であるコート紙と非塗工紙の代表である上質紙を使用し、比較テストをおこないます。ジャパンカラー対応コート紙で印刷し、基準の刷り物を作成。これから始まるさまざまな実験の基準用紙として活用します。
 上質紙で刷る絵柄もコート紙と同じデータを使用。紙の違いによる色調表現の差を端的に示していきます。

コート紙 色校正

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上質紙 色校正

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コート紙 トーンリプロダクション濃度値 & ガモットマッピング

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上質紙 トーンリプロダクション濃度値 & ガモットマッピング

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所 感

 コート紙でのディテールや色調の再現性に比べると、上質紙はコントラストが無く、シャドー部は潰れて見えてしまいました。コート紙は発色性に優れていますが、質感が、よくある一般的な紙のため、デザイナーの方々にとっては物足りなく感じるように思えます。
上質紙は、価格的にリーズナブルですが、平滑性が良く手触り感や紙の白さもあり、使い方によっては非常に万能な用紙です。
 今回、実験結果を基に修正を進めてみましたが、オペレータが手を加える事で非塗工紙である上質紙でも満足の行く色調に再現出来たと感じました。コート紙とは違う味わいを表現出来ています。

用紙実験考察

 濃度値のトーンリプロダクションを見ると、0〜60%程度まではコート紙とほぼ同じような動きをしていますが、それ以降のシャドー側の動きに大きな変化が現れました。コート紙では、70%付近からしっかりと濃度が上昇していますが、上質紙では、シャドー側は60%までと同じ傾斜でしか上がりません。
 ガモットマッピングからは全体の色域が60〜70%程度まで圧縮されていて、特に2次色の色域圧縮が顕著に見られることが判りました。 以上の事から上質紙での色域の圧縮は、60%以上のシャドー側の領域にあり、そのために上質紙では、階調不足、シャドーのつぶれ、色のにごり等が起こるのです。

修正方法

 上質紙で、より美しい印刷物を作るためには、この圧縮された濃度値に階調の幅を持たせるための調子補正が必要となります。60%以上のシャドー側にコントラストを付けていきます。また、にごりに関してはシアン、マゼンタを下げて調整します。暗い印象の修正は、彩度を上げることによって明るさを出しました。後は、絵柄によって色のバランスを整えて仕上げていきます。

上質紙“調子修正後”色校正

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まとめ

 弊社オペレータによる調子補正をした画像は、コート紙に比べるとコントラストはやや下がりますが、色相と階調に関してはかなりコート紙で刷ったものに近づけることができました。
 上質紙で、ここまで色調の表現ができれば絵柄によっては写真集などに使用するのも面白いのではと感じます。
 今回のテストは、ジャパンカラーでの基準値で印刷したコート紙での再現性に近づけるために画像修正したものを掲載しました。用紙の特性やどれくらい色が変化するのかなど、用紙を選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。また、この用紙が知りたい、と言ったリクエストも受け付けていきます。
 その他、ご質問などございましたら遠慮なくお問い合わせください。

《次回はマットコート紙を実験します》

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