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佐藤時啓: Presence or Absence

5月もあと1週間で終わり、梅雨入りの時期が近づいてきます。
じめじめとした日が続き、営業にとっては少し辛い季節です。
でも、梅雨明けが来れば本格的な夏の到来です。
夏休みの計画など、楽しいことがたくさん待っていて、
個人的には好きな季節です。

今回のブログは、現在恵比寿にある東京都写真美術館
開催されている、『佐藤時啓 光ー呼吸 そこにいる、そこにいない』展を
見て感じたことを書いてみます。

 

最初に展示されている写真は、作者自身が発光するペンライトや
太陽光を反射させた鏡を持って歩き回り、その移動の軌跡を
フィルムに定着させた作品です。
モノクロの写真の中に、現実には見えることのない光の点や
軌跡を見ると、人影のない都会や海、山の景色の中に
生命のようなものを感じました。

写真は、現実の風景をそのまま写し取っているように見えますが、
モノクロ写真の世界は、現実の風景として人間の目には決して
見えることのない、不思議な世界を見せてくれるように思います。

一切の色を無くし、黒と白で表現された世界。
色を無くすことにより、見えなかったものが見えてくるようにも感じます。
佐藤氏の作品には、さらに光が加わっています。
生命が生まれるために必要な光。人間の目には形として見えない光を
佐藤氏は作品の中で見せてくれます。

数ある作品の中でも私が感動した作品は、海を写した作品です。
生命が誕生した海にたくさんの光の点が写し込まれ、
まるで魂が集まっているようです。
静かな海の中で無数の光を見ていると、様々な記憶が蘇ってくるようでした。

ピンホールカメラで撮った作品も味わいがあり、全てが綺麗にシャープに
写ることが良い写真とは限らないのではと感じました。
ちょとボケて色も現実には見ることのない色だとしても、
そのちょっとピンぼけの写真の世界に引き込まれるような思いがします。

Wandering Cameraというコーナーの作品では、地面を写した上に
風景を重ねたような写真が展示されていました。
これらの作品も、近くで見たときには地面の様子ばかりに目がいき、
何を写しているのかはっきりとわかりませんでしたが、離れた所から
もう一度見ると、そこには夕日の風景が浮かび上がっていました。
何とも言い表せられない幻想的な写真に見えました。
近くで見たときには全体の様子が分からず、遠くで見たときには
細部の様子は溶け込み、まるで違う写真のように見えます。
モノを見るためには、違う視点から見るという行為がとても重要だなと
感じました。

佐藤氏の作品は、どれも大きな作品が多く実際に見てみると
このサイズだからこそ大きな感動を与えてくれるように思います。

久しぶりにモノクロ写真を鑑賞しましたが、カラー写真とは違い
想像力が増すような気がして感動しました。
作品一つひとつにストーリーを感じ、とても有意義な時間を過ごせました。

ぜひ、皆さんもご覧になってはいかがでしょうか。 (小林)

                                                                                                         www.syabi.com                          

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