東京平版のかみの実験室

第十一回 ヴァンヌーボVGスノーホワイト

 第11回は竹尾の「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」を選択しました。
 ファインペーパーの風合いを備えながら温かい紙の風合いとグロス感を併せ持つ印刷再現性の高い高級印刷用紙とされ、高い評価を唱えているこの特徴的な「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」を材料にしてみました。

用 途

 ヴァンヌーボの魅力は、豊かな風合いをもち、中に空気を含むために軽くて嵩高な特徴をもち、厚くて軽い書籍などをつくることができます。
 また、印刷インキの重ね具合によって豊かで微妙なニュアンスの光沢が出るために、表現豊かな印刷物に仕上げることができます。
 名刺、ポストカードからパンフレット、書籍、作品集まで幅広く使用されて、手軽に高級感を演出することが出来る用紙です。

所 感

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 「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」は、印刷面に光沢感が出て色調再現されましたが、コート紙と比べると、シャドウ部の潰れが感じコントラストが落ちてしまい、見た目にスッキリした感じが無くなってしました。しかし全体的にボリューム感が出た印象でした。

用紙実験考察

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 ガモットマッピングのグラフからは全体の色域がJapan Color準拠のコート紙と比較して、レッド系の再現はコート紙に近いですが、グリーン系とブルー系の明度と彩度の値がやや劣ることがわかりました。特にブルー系が暗くなって彩度が落ちている事がわかります。

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修正方法

 今回の紙の研究室から、修正方法としてICCプロファイルを使用しました。
 ICCプロファイルで色調補正するメリットは、基準用紙である「コート紙」と「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」との色差を計測チャートから導き出すことにより、計測チャートの色パッチごとの細かい補正が出来るところにあります。今回、X-rite社のアイワンプロファイラーにて、IT-8(1617色パッチ)を使用して「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」のオリジナルのICCプロファイルを作成しています。

 補正処理には「Adobe Photoshop CC」を使用しています。方法としては、ファイルメニュー「編集」から「プロファイル変換」、変換後のカラースペースとして「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」、変換オプション、マッチング方法を「相対的な色域を保持」で処理することによりCMYK値の最適化を行っています。

 また、今回の用紙が、嵩高の「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」ということもあり、油性印刷適性(シャドウ部の潰れと乾燥不良による裏付き対策)も考慮して、インキの総使用量を320%に抑えたプロファイルを作成しました。(元画像のインキ総使用量は360%)成果として、修正前にあったシャドウ部の潰れた感じが無くなりました。しかし全体のボリューム感は損なわず、修正後の印刷物には透明感も生まれスッキリとした仕上がりになりました。

ヴァンヌーボVGスノーホワイト“調子修正後”色校正

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まとめ

 「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」は、白紙の状態で一見すると非塗工紙のようにも見えますが、印刷インキが乗った箇所は若干の光沢を帯びるため、ヴァンヌーボシリーズの中でも最もグロスな仕上がり感を見せてくれる紙です。
 一方で紙そのものの持つ温かい紙の風合いも大きな魅力で、印刷物に高級感を演出する用紙として最適と評されてきました。
 その「ヴァンヌーボVGスノーホワイト」にICCプロファイルを適用する事により、全体のボリューム感を損なわずコントラストを再現する事で、用紙の魅力を更に引き出す事が可能になりました。

<次回:タフアイボリー>

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