一月前のブログで『JAPAN COLOR』でのカラーマネジメントの話をさせて頂きました。
では、実際どのような方法でカラーマネジメントをしていけばよいのかを簡単に説明してみたいと思います。
まずは、カラーマネジメントに欠かせないのが濃度計です。
印刷物の濃度管理といえば通常ベタ濃度で管理していますが、
『JAPAN COLOR』ではL*a*b*値による色管理が必要となってきます。
当社ではコニカミノルタから発売された、色測定と濃度測定が出来る蛍光分光濃度計『FD-5』を新しく購入し、測定器として使用しました。
『JAPAN COLOR』認証取得のためには様々な基準がありますが、ここでは当社がおこなった『JAPAN COLOR』に準ずる濃度設定にするための手順を、簡単に説明していきたいと思います。
手順はたったの2つです。
1 ベタ濃度の決定
2 ドットゲインカーブの作成
ステップ1 ベタ濃度の決定
『JAPAN COLOR』の基準濃度はL*a*b*値で定められています。
具体的な数値は下記の通りです。(コート紙、ステータス T での数値)
C L*53.4 a*-36.4 b*-51.6
M L*46.3 a*76.1 b*-2.9
Y L*88.6 a*-5.9 b*93.6
K L*16.3 a*1.4 b*2.1
ベタ濃度の決定とは、このL*a*b*値に最も近くなる各色のインキベタ濃度を見つけ出す事となります。
このとき使用するのが、スダレチャートというものです。
スダレチャート(『JAPAN COLOR』のホームページからダウンロードすることができます)
まずは、このスダレチャートをドットゲインカーブがリニアの状態でCTP出力をします。
リニアで出力する理由は、印刷機にはドットゲインに個体差があり、その特性を知る必要があるからです。
リニアで出力したCTPの版で左から右に通常の基準濃度から±0.3程度の濃度勾配をつけて印刷します。たとえば、シアンであればベタ濃度が通常ステータス Eで1.65に設定しているのであれば、左から右へ1.35~1.95程度の濃度差をつけて印刷をします。
刷り上がった印刷物のベタの部分の色(L*a*b*値)を測色(ステータスT)し、基準色との色差を算出します。
算出するためのエクセルフォーマットも『JAPAN COLOR』のホームページからダウンロードすることができます。
このフォーマットに測定した数値を入力することで、色差を算出する事が出来ます。
その中で一番色差が少なくなるところのベタの濃度を測定し、その濃度を印刷基準濃度として決定します。
ちなみに、『JAPAN COLOR』では色差ΔE5以内が基準とされていますが、経験上実際はΔE3以内でないと安定した色管理は出来ません。
色差をグラフ化したもの
ベタ濃度1.65近辺が基準値に一番近くなる事がわかる
ステップ2 ドットゲインカーブの作成
次にドットゲインカーブの設定です。
『JAPAN COLOR』では50%の網点部のドットゲインが14±3%以内と決められています。
決定したベタ濃度で印刷した際、50%の網点部のドットゲインが14±3%以内となるようドットゲインカーブを調整する必要があります。
基準値設定のためなので、テストの際は14±1%を目安とする事をおすすめします。
それでは、先程のスダレチャートで決定したベタ部分の50%の網点部のドットゲイン値を測定して下さい。
これが基準値以内であれば、カーブはリニアのままでOKという事になりますが、それをオーバーした数値であればカーブを下方修正し、逆に下回る数値であればカーブを持ち上げて上方修正が必要となります。
修正したカーブでCTP出力し、今度は決定したベタ濃度近辺で濃度勾配をつけて印刷し、濃度とドットゲインの測定をします。
この時も、ステップ1でおこなったベタ部分の測色をします。
そうすることで、より精査されたベタ濃度値を導き出す事が可能となります。
そして『JAPAN COLOR』の基準値に一番近いベタ濃度で印刷した際、50%の網点部のドットゲインが14±1%以内になるまでドットゲインカーブ調整→印刷→測定の作業を繰り返します。
また、ドットゲインカーブ調整をする際には、ライト部、シャドー部も一緒に調整する事をお勧めします。
20%と80%の網点部のドットゲイン値が10%程度となるのが目安です。
濃度設定までの作業は以上で終了です。
たったこれだけで、『JAPAN COLOR』基準の設定となります。
どうです、意外と簡単でしょ?
もちろん認証取得はこれだけではありませんが、基本的にはこれで基準に準じた印刷物が刷れるはずです。
でも、この状態を常に維持・管理していくのが、実は一番大変なのですよね。
標準印刷物をつくるうえで一番大切なのはCTP出力時のドットゲインカーブの設定であるという事が分かって頂けたと思います。
もし、今までドットゲインカーブによる濃度調整を行なっていなかったならば、これを機に皆さんの会社の印刷機も『JAPAN COLOR』基準 となるよう調整してみてはいかがですか?
データのみで印刷原稿がやり取りされている昨今、標準印刷物への印刷会社間のインフラ整備って、とっても大切だと思います。(佐々木)
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