東京平版株式会社
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『田中繁吉』画集への想い

東京平版、営業部部長 石川です。
今回私が携わらせて頂きました仕事について、
この場を借りて、皆さんにご紹介したいと思います。

ことの始まりは2011年の夏まで遡ります。
弊社に田中彌壽雄先生から電話を頂きました。
亡父であらせられる洋画家の田中繁吉先生の画集を出版したいのだというのです。

お話を伺いに行った、暑い夏の日の駒沢のアトリエは
今でも良く覚えています。

先生に話を伺いますと、
20年以上前に弊社で制作、印刷した図録が目に止まり、
その奥付けの印刷会社の名前を見てお電話を頂いたとのことでした。

早速見積りをさせていただいた後、正式に依頼をお受けいたしました。
さあそこからが大変でした!

駒沢のアトリエにある作品や近県の寄贈先にある作品、
果ては九州まで出向いて作品を撮影を行い、
1年近くもの時間を費やしました。

それから、画集に載せる作品の選定、
レイアウトサンプル出しを繰り返しながら
更に時間は経過していきます。

亡きお父上の想い入れのある作品が数多くあり、選定が難しいようでした。

最初の話では「全116頁」程度のボリュームで考えていたようですが、
最終的には、載せたい作品が募り、
「全286頁」にも達しました!

ようやく全貌が見えたところで、束見本を作成し
田中彌壽雄先生にお見せできたのは今年の3月下旬のこと。
すでに一年半が経過していました。

総重量が3kg!を越える立派な見本に
田中彌壽雄先生には満足いただけたようです。

装丁も表紙はクロス張りで、タイトル金箔押しの糸かがり上製本です。

ケースは先生のご希望により、途中での仕様変更がありました。
単純な厚紙を折ったケースから、ケースにタイトルを貼る仕様、
それから和紙を使用して貼り函の依頼へと変わりました。

しかし、和紙は手漉きの為、
全数そろえると半年程納期がかかってしまうため
断念せざるをえない事になりました。

どうしても諦めきれないようなので、
手触りが和紙に近い既成の紙をご提案させて頂き、
これもタイトルを金箔押しの仕様として、
やっとのこと完成にこぎ着けました!
出版記念会は2週間後に差し迫っていました!

このように、作り手のこだわりに、
弊社もできるかぎりお応えすることで、月日が経ってしまった訳です。

ここまでの装丁の画集は昨今、なかなかお目にかかれません。
ご興味をもたれましたら、お見せ致しますので、是非ご連絡ください。

撮影からデザイン、製作、印刷、加工と
全てに携わることができ、非常に貴重な経験をさせて頂きました。

記念画集を作って家族で楽しもうということから始まった話でしたが、
出版記念会についても大掛かりになり、
フランスからオペラ歌手、ロシアからピアニストを招待、
そして相撲甚句披露有り、350名程を巻き添えにした楽しい会になりました。

何よりご家族の楽しい笑顔が見れたので幸いでした。

最後に、多くのお客様の大切な思い出の作品にまた携わることができるよう、
この本が、10年後、20年後の新たな出会いの切っ掛けになるように願いを込め、
奥付を掲載させていただきます。