東京平版のかみの実験室

第八回 b7バルキー

 第8回は日本製紙のb7バルキーを選択しました。
 b7バルキーは、以前この紙の研究室で取り上げたb7トラネクストと同じb7シリーズのひとつです。
 日本製紙の『b7シリーズ』は、他にb7トラネクスト、b7クリーム、b7ナチュラルが発売されています。
 『b7シリーズ』の基幹銘柄のb7トラネクストと比較しても、b7バルキーは、低密度でより柔らかく、より白いことが特徴とされています。
 提供される米坪が豊富ということもあり、様々な用途に活用される人気の商品です。
 また、b7バルキーは、東日本大震災で津波の被害に遭った日本製紙石巻工場にて、2012年4月より製造発売された新しい塗工紙です。
 復興作業の中で、開発された用紙ということもあり復興のシンボルにもなっています。

用 途

 軽く、柔らかく、優しい風合いの用紙であることから、書籍に使用されることが多いです。
1色で使用されるのはもちろん、白色度が高く、不透明度が高くインクが裏抜けしづらい特徴もあります。カラー印刷にも適してみるため、アパレルのカタログにも好まれる商品です。

所 感

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 柔らかい手触りが印象的な用紙です。
 その印象のため、マット紙特有の沈みや暗部の濃度が失われてしまうイメージを持ちました。実際印刷して見ると、イメージ通りインクの沈みによりコントラストが弱く印刷されましたが、修正することによって発色よく、濃度感も感じられるようになりました。色のバランスもとれていることから、再現性は高い印象を持ちました。

用紙実験考察

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 b7バルキーは前に実験したb7トラネクスト同様に人物、室内、風景の写真3点共に発色性が良いと感じました。ただ、濃度値に関しては、紙自体が低密度のため、インクが吸収されやすく、特に70%辺りからの濃度が上昇しませんでした。
 これは、70%からベタにかけての濃度域か狭いことにより、コントラストが弱くなってしまうということになります。
 トラッピング数値を測定すると(表記載)レッド系統は42.18% グリーン系統は80.77%ブルー系統は60.27%と計測されました。これは、b7トラネクスト同様、マゼンタに対してのイエローのトラッピング率が低い測定結果となりました。
 ガモット数値を検証するとb7バルキーは、Japan Color準拠のコート紙と比べ、色彩の表現領域は少ないですが、色のバランスがとれていることが分かります。

修正方法

 修正前の印象として、中間のドットゲイン値が高いため、中間の濃度が高く、コントラストが弱いことにより、全体的に沈み濃い印象となっていました。
 それらを踏まえ、トーンカーブを使用し中間を抑え、暗部の濃度アップをしました。
 また、色が沈んでましたので、2次色・3次色の濁りの成分となる各々の色も抑えました。そのことにより、コントラストをつけ、発色よくすることが出来ました。

b7パルキー“調子修正後”色校正

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まとめ

 今回選択した『b7バルキー』は、シリーズということもあり第3回で取り上げたb7トラネクストと類似していました。
 しかし、b7トラネクストと比べ、b7バルキーがより低密度の商品ということからインクが吸収されやすく、中間がより沈んでしまい、一定濃度から上昇が難しい一面もありました。
 濃度が出にくい点はありますが、紙自体の白色度が高いため、修正後は発色も非常に良く、色のバランスもとれているため、見た目上とてもきれいなものが出来たと思います。
 コントラストをつけたり濁りを取るなど、修正方法としては別段難しい作業ではありませんでしたので、調整後の出来上がりから、扱いやすい用紙の印象を受けました。
 種類も豊富で、風合いもある扱いやすい用紙ですので需要が多いことも頷けます。
 また、石巻工場の復興後第一号の商品開発ということで、携わった人々の夢と想いがいっぱい詰まった用紙です。このようなことからも、市場に求められる用紙として、人気があることも理解出来ます。

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