東京平版のかみの実験室

第七回 サテン金藤 N

 マット紙のしっとりした触感とコート紙のグロス感を兼ね備えたダルアート紙のロングセラー、サテン金藤をセレクトしました。宝石や自動車など各種高級カタログ定番の用紙として支持され、長い間愛用されています。

ダル系アート紙とは?
 塗工紙の白色面の光沢が抑えられ、印刷した際に光沢が出るよう施され、インクがのらない部分は白さが際立つように工夫された用紙です。マット紙よりも高級感があります。 「サテン金藤N」は王子製紙より製造販売されており、 サテン金藤NはA1グレードとなり、その他王子製紙のダル系のラインナンップにA0グレードのOKウルトラアクアサテン、A2グレードのOK嵩王サテンZが製造販売されております。 その他ダル系の用紙は中越パルプ工業からはA0グレードダルの雷鳥スーパーアートMN、A1グレードダルの雷鳥ダルアート。三菱製紙からはA0グレードダルのダイヤプレミアダルアート、A1グレードマットのスーパーマットアートなど各社より製造販売されております。

用 途
 コート紙と比較すると、用紙の表面の光沢が抑制されており、黄色味がかっていることが分かります。
マット紙とコート紙の両方の特性をミックスさせた商品です。優れた網点の再現性に適していることから、高級宝石の商品カタログ、高級自動車など商品を取り扱う用紙として、需要が高いと言えます。

所 感

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 触れた際のキメ細かい手触り感と心地の良いしっとりした感じで高級感を出したいカタログなどで、指示される魅力的な用紙であると感じました。しっとりした手触りなのでマット紙特有のドライダウンを危惧していましたが、インキの乗りも懸念した程ではなく安定して尚かつ写真も網点もクリアに発色よく再現されて、品の高さにも親しみやすさを感じる用紙であると思います。

用紙実験/考察



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 サテン金藤Nは人物、室内、風景の写真3点共に発色性が、良い印象を受けました。トラッピング数値を測定しますと(表記載)レッド系統は75.35%グリーン系統は86.70%ブルー系統は67.24%と計測されました。ガモットマッピングのグラフからはコート紙と遜色なくバランス良くまとまっている事が分かります。今回の数値検証で、サテン金藤Nは全体的にトラッピングの数値が高くインキの転移性に優れ、鮮やかで高級感のある仕上がりを得られる用紙と改めて感じました。

修正方法

 予想した通り良い数値が測定された事、刷り上がりの印象も十分に優れた 用紙であると認識させてくれた、サテン金藤の魅力を修正しないで伝える事が最善と判断しました。

まとめ

 これまで紙の研究室では、第1回から第6回までの「OKアドニスラフW」において、JAPAN COLOR準拠のコート紙を基準に修正作業を行っておりました。しかし、今回のサテン金藤Nに関しては、測定数値と印刷物の比較検証を行った結果、用紙の特性を生かして、修正作業をあえて行わない結論に至りました。
 このようなことから、高級商品カタログとして、愛用され続けている理由は、検証結果の数値においても、実証できたといえます。今後も、サテン金藤は長く愛用される商品であり、今後も定番であることは間違いないと思います。

《次回は「B7バルキー」を実検します。》

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