東京平版のかみの実験室

第五回 HSハミング

用 途

 HSハミングは、北越紀州製紙より販売されており、幅広い米坪ラインナップ(70.0g/m²~140.0g/m²)「HSハミング」「HSホワイトハミング」「HSホワイトソフト」「HSスノーフォース」のラインナップの中でもHSハミングは黄色みが強い印象です。スノーフォース以外の3種は商品開発の際、ページめくりを考えた商品ということもあり、ざらざらかつ、ソフトな手触りが特徴的です。特にハミングは書籍や児童書などの用途で活用されており、シャープな印刷効果と、高い不透明度を併せもっていることで、絵柄などのカラー印刷物を表現することに適している嵩高紙です。

所 感

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 微塗工紙とはいえ、上質に近い手触りから全体的にインクが沈んでしまい、色調の再現性は悪いように思っていました。中間からシャドー部はやや潰れており、赤浮きしているように見えましたが、全体的には再現性は高く良い印象です。実験結果を元にオペレータと共に修正を進行し、少し手を加えることでコートに近い色調再現ができ、ハミングの特徴を活かした味わいある表現ができています。

用紙実験/考察



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 濃度値のトーンリプロダクションを見ると、ハミングは、上質紙に比べ80%付近からも濃度が上昇していることから、色調の再現性が良いことが確認できます。しかし、トラッピング値を検証すると、コート紙のレッドに対してハミングのレッドがやや低く差異があることが分かります。これは、マゼンタ、イエローのトラッピング不良だということになります。

修正方法

 全体にコントラストをつけるためにトーンカーブで中間を少し下げ、シャドー部分を上げる作業を行いました。 また、全体的にマゼンタとイエローの濃度が強い印象があったため中間部からシャドー部分にかけてマゼンタとイエローを下げることで、コート紙のような色調のメリハリが出るように修正しました。

HSハミング“調子修正後”色校正

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まとめ

 今回は、微塗工マット紙HSハミングということで、紙の風合いから色調再現は上質紙に近いものと考えていました。刷り上がりもシャドー部分はインクが沈みコントラストは少し下がりますが、特定の色を整え修正を加えることにより、色相と階調はコート紙で刷ったものにかなり近づくことができました。HSハミングのやや黄色みがある優しい風合いや、それと併せ持つ高い不透明度から絵本などの多色印刷物に多く使用されている理由が分かった気がします。

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《次回は[サテン金藤]を実験します》

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