東京平版のかみの実験室

第四回 モデラトーンGAナチュラル

用 途

 非塗工紙のモデラトーンシリーズは紙表面の凹凸感と嵩高な紙厚が特徴です。また美的感覚を満足させてくれる高い装飾性のある紙でもあります。価格も比較的手頃で主な用途としては本の表紙、見返し、封筒、DMなどで使用されています。紙色のバリエーションも現在発売されているものでアイス、エキストラホワイト、シルキー、スノー、ナチュラル、ピュア、ホワイトの7種です。
 名前にあるGAとは竹尾(グリーンエイド)シリーズの略で製紙業界において環境負荷の低減を目指し環境に配慮した紙を(グリーンエイド)シリーズとしてラインナップしています。
 その中で今回はナチュラル色を研究材料として選んでみました。

所 感

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 モデラトーンGAナチュラルは風合いのある紙ではあリますが、紙色が黄色い性質であり非塗工でエンボス感があるため、発色については上質に近く、コートやマットコート紙と比べるとインクが沈み濁った印象になりました。したがって、クリアな発色を求められる印刷物にはあまり向いていないのではないかという印象を持ちました。

用紙実験/考察

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 第一印象は見た目に全体的なコントラスト不足が目立ち、トラッピング表を見てもコート紙に比べてトラッピング値が低い事がわかります。特にレッド系はコート紙75.05%に対しモデラトーン43.27%ブルー系も同様に73.41%に対し51.09%という結果になっています。トラッピング値が低いという事は色の彩度(発色性)に大きく影響してくるのですがこれは紙の特質によるものであると考えられます。

修正方法

 まずコントラストを出す為に、同じ非塗工紙である上質の補正値からC、M色のライト部分をプラス3%とシャドー部分をプラス5%、またBK色に関してはライト部は動かさずシャドー部のみをプラス5%になる様調整しました。彩度に関してはレッド系と、ブルー系をそれぞれ各プラス15%の設定数値にする事により、レッド系がシアン-5%、マゼンタ+5%、イエロー+5%、ブルー系はシアン+5%マゼンタ+3%、イエロー-3%、になる様に調整しました。

モデラトーンGAナチュラル“調子修正後”色校正

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まとめ

 前回同様Japan Color準拠のコート紙を目標に修正をしてきましたが、修正後の校正を見る限り、非塗工紙であるモデラトーンGAナチュラルをコート紙に近づけるという事は非常に困難であるという事がわかりました。原因としてはインクの沈みがあげられ特にシャドー部のつぶれがより際立ってしまうためコート紙のような彩度を表現する事もコントラストを出す事も難しく写真の再現性を求められるものには向いていないという結論に至りました。一般の印刷物であまり需要がないのはこんな理由からかも知れません。しかし手触りが良く暖かみのあるこの紙はとても趣きがあるので、本の表紙、見返し等に使用すれば嵩高紙とのメリットと相俟って良い商品が出来るのではないかと思います。

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《次回は[ハミング]を実験します》

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