東京平版のかみの実験室

第三回 b7トラネクスト

 b7トラネクストは日本製紙の銘柄。2002年にBe-7として販売をはじめましたが、規格変更に伴い2009年に現在のb7トラネクストになりました。発売前は嵩高紙(かさだかし)に関して、時間がたつと黄ばんでしまう等の問題がありましたが、書籍において崇高紙へのニーズが高まっていたこともあり、日本製紙は他社に先駆けて紙質が滑らかで変色しにくい、Be-7を開発し販売しました。その後は他社も追随するかのように嵩高紙を販売ました。b7トラネクストは東日本大震災で壊滅的被害を受けた、日本製紙石巻工場で作られております。安価であることもあり、現在の出版業界においてスタンダードな用紙のひとつとなっています。

嵩高紙とは

嵩高紙とは紙の繊維の隙間に空気を含み、通常の紙より軽くて厚いのが特徴です。

用 途

やさしい風合いの塗工紙で、非常に人気のある用紙のひとつです。特に商業印刷で好まれ、書籍、ムック、雑誌、カタログ、カレンダーなどによく使われます。

所 感

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 実験前と実験後の数値を見て想像をしていた事と測定結果との違いに驚きました。b7トラネクストは塗工紙とはいえ、この手触りだとインクは沈みやすく、色の再現性は悪いのではないか?と思っていました。前回実験をしたマットコート紙と比ベてトーンリプロダクションは非常に近い結果となりました。今回は、b7トラネクスとマットコート紙の差と、その差を補うという部分を中心に見ていきたいと思います。

用紙実験考察

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 トーンリプロダクション濃度値を見ると、前回紙の研究で扱ったマットコートと似たグラフの推移になりました。紙質の違いよりも表面に塗布された薬剤の影響でマットコートと同じようなグラフの推移になったと思います。しかし、トラッピング値に関してコート紙やマットコート紙との大きな違いがありました。2次色のトラッピング値が低く、特にマゼンタに対しイエローのトラッピング率が低く、特に赤系の部分は濁りイエローが不足しているように見えました。

修正方法

 全体的にはマットコート紙と同じように0%〜70%辺りまでの濃度を少し下げ、70%〜100%までを少し上げて視覚的な濃度不足を補いました。また、マットコート紙と比べて、トラッピング値の低さが数値として大きくでていました。トラッピング値が低いと先刷りのインクに対し後刷りのインクがのらず、先刷りのインクが勝ってしまい、色によっては濁りが目立ってしまいます。それを補う為に、特に目立ちやすい色のレッド系とマゼンタ系のシアンを少し下げ、イエローを少し上げました。それにより赤系の発色と青系の濁りを改善してコート紙に近くなりました。

b7トラネクスト“調子修正後”色校正

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まとめ

 実験前はコート紙とb7トラネクストの測定結果の数値差が大きく離れるものと考えていましたが、実際に測定してみると近い数値になりました。用紙の特性としてトラッピング値は違うものの、特定の色を整えることで、その差を埋めることができました。仕上がりを見てもコート紙と比べさほど遜色無く思えます。b7トラネクストの扱いやすさや多様性をみても、出版会社様で需要がある事も理解できます。今後も見ただけでは解らない用紙は多々あることと思います。実際にインクで刷リ、測定し、検討する事でその紙を理解し知識を深めることができるものと考えます。
 その他、ご質問などございましたら遠慮なくお問い合わせください。

《次回は[モデラトーン]を実験します》

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