東京平版のかみの実験室

第二回 マットコート紙(ユーライト)

 マットコート紙は、コート紙ほどツヤ感を出したくない印刷物を作るときに良く使用され、商業印刷物ではコート紙とともに、生産量も多く、価格もコート紙、上質紙と並ぶ多く使用される用紙です。
 今回は、A2マットコートの中から代表的な銘柄であるユーライトを選択しました。ユーライトは、日本製紙から1967年の生産開始以来代表銘柄として、定番製品となっております。下記の表から見ても、マットコート紙の中でもユーライトの白色度は平均的ですが、光沢度はニューエイジとともにやや低く、よりマット感のあるしっとりした肌触りを感じることができます。

・ユーライト/日本製紙の銘柄(白色度 85% 光沢度 20%)
・OKトップコートマットN/王子製紙の銘柄(白色度84% 光沢度 25%)
・ニューエイジ/王子製紙の銘柄(白色度83% 光沢度18%)
・ミュ-マット/北越紀州製紙の銘柄 (白色度88% 光沢度 30%)
・ニューVマット/三菱製紙の銘柄 (白色度87.5% 光沢度 27%)
・ユトリログロスマット/大王製紙の銘柄 (白色度85% 光沢度22〜28%)

色調に関しても、コート紙に比べて遜色の無い用紙ですが、今回の実験によってどんな結果がでるのか楽しみな紙でもあります。

コート紙 色校正

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マットコート紙 色校正

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マットコート紙 トーンリプロダクション濃度値 & ガモットマッピング

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所 感

 実験を行うまでは、コート紙とマットコート紙の認識はほぼ同じような色調で再現され、マットな為コントラストが少ないという印象を持っていました。 今回、コート紙と比較することにより色調は遜色ない再現性をしていましたがシャドウ部の重たさが気になりました。これは、ドライダウンにより印刷濃度が減少し、色が沈んだように見えることもひとつの要因であると考えられます。コート紙と同じ絵柄を比較実験することで、用紙の特性がよりはっきりと判ったような気がします。

用紙実験考察

 濃度値のトーンリプロダクションを見ると、0〜70%程度まではコート紙とほぼ同じような数値で推移していますが、それ以降ではシャドウ部分に大きな変化現れました。

 コート紙では、70%付近からしっかりと濃度が上昇しており、シアン、マゼンダ、ブラックは濃度値が1.5まで上昇していますが、ユーライト紙ではシアン、ブラック、マゼンダが濃度値1.3でコートに比べて、シャドウ部の上昇値があがらないことが分かりました。ガモットマッピングからも、コート紙とユーライト紙の色差はほぼ無く、再現性の違いはシャドウ部分による濃度差の違いによるものだと判ります。 コート紙では.70%付近からしっかりと濃度は上昇しており、階調があるためコントラストがでていますが、ユーライト紙では、シャドウ部にコート程階調がないことが判りました。

修正方法

 全体的に濃度が濃い印象があったため、ライト部から中間にかけてシアン、マゼンダ、ブラック、イエローの濃度数値を少し下げました。マットコート紙の特性で、乾くとドライダウンしやすい用紙のため、マゼンダに関してはドライダウンを考慮した、赤うきを抑える処理をしました。この処理により、シャドウ部分は、コート紙のような濃度値に、階調の幅を持たせることができました。

マットコート紙“調子修正後”色校正

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まとめ

 あまり差がないと思っていたコート紙とマットコート紙ですが、修正を加えることによって、マットコート紙でも素晴らしい色の再現性ができました。今回のテストは、ジャパンカラーでの基準値で印刷したコート紙での再現性に近づけるために画像修正したものを掲載しました。用紙の特性やどれくらい色が変化するのかなど、用紙を選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。
 また、この用紙が知りたい、と言ったリクエストも受け付けていきます。
 その他、ご質問などございましたら遠慮なくお問い合わせください。

《次回はb7トラネクスト紙を実験します》

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